通訳者の受難と救いのグッズ

遠い遠いザンビアはリビングストン、ビクトリアの滝周辺の国立公園内に位置するリゾートホテルの会議会場で4か国語の通訳者たちを待っていたのは掘っ立て小屋のような通訳ブースと見慣れない装置だった。流石に国際会議慣れしている主催者のオーダーなので必要な数のブースと通訳音声チャネルは確保されているのだが、なぜか通訳者用ユニットは音量調節が出来ず、おまけにマイクごとの音量がばらばらでイヤホンを耳に押し付けるようにしないと(しても)聞こえなかったり逆に耳をつんざくような大声が入ってきたりとまあ大変。しかも当然あるはずの手元灯りがなくブースの中は薄暗い。

途上国では物理的な環境が整っていること自体望むべくもないとはいえ、これでは耳栓と目隠しをして通訳しろというようなもの。ドラえもんのような素敵なお友達がいれば四次元ポケットから必要なものを次々出してもらいたいところだがここはザンビアだ。まあ、日本にだってドラえもんはいないが頼りになるエンジニアさんがいる。

でも今はまず自力で資料の読めない暗さを何とかしよう。こんな時のためにラップトップのUSBスロットから電源のとれるLEDランプを常に持って歩いているのだがそれをパートナーのためにブース内に置きっぱなしにすると自分が自由にPCを使えない。そこでブース内に延長コードを引き、最近購入して今回初めて持参した海外電圧(240V)対応電源タップのUSBスロットにランプを直接差し込むことで灯りを確保。他言語ブースの同僚たちから称賛を浴びた。

次は音だ。ここで活躍したのがスマホにつないで手元で音量調節ができる長さ5㎝ほどの小型のアンプ。現地の装置とヘッドフォンの間に挟むことで音量がコントロール出来て音質も若干改善、完ぺきとはいえないまでも何とか凌げるレベルに。やれやれ、念のための備えはしておくものだ。私は今や、通訳業界のドラえもんと呼ばれている。

(「毎日フォーラム 日本の選択」2017年6月号掲載)

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